禅語【無事】平常心こそ幸せの境地

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禅語

禅語「無事(ぶじ)」

2022年12月

厳しい冷え込みが増すお山は、水たまりに薄氷の張る朝が訪れました。蕭条とした冬木立に一層の肌寒さを覚えますが、目を転じると千年の翠に輝く松や花の盛りを迎えた寒椿など、寒気凛冽に怯むことのない生命の力強さを感じます。

古代、日本人は厳寒期に寒稽古や寒垢離、寒復習、寒参りなど苦しい稽古や修行を行って、心身を鍛錬しました。「寒さに負けない」と、自らに言い聞かせ、あえて逆境に挑むことで、積極果敢な気力と体力の充実を求めたのです。

病を「病気」と呼ぶのは、病の時には身体だけでなく、心も病むことを警告したものです。「寒さに負けない」という逆境への意識と同じように、「病に負けず、必ず治してやるのだ」と、心を強くして病に立ち向かうことで、この警告を跳ね返し、平穏無事で健康な生活を取り戻すことが叶います。

今年も一年間、私たちは身の回りの様々な障碍や悩みに対して、苦難克服の努力を積み重ね、無事に師走を迎えました。

現代はこの「無事」という言葉を「事無きを得る」との意味で使いますが、禅語本来の意味は「執着や迷いのない、平常心の境地」です。喜怒哀楽のない、つまらないような一日が、実は心の安らぐ、感謝すべき日である、という禅の教えに使われるほか、自然体で生きることが人の真の姿である、と説いた「無事是貴人」の茶掛も有名です。

病を悲観せず、ありのままを受け入れた平常心、つまり「無事」の境地で臨むことで、いかなる難症も完治の悦びへと転化することが叶います。

天地新生に向かうこの時季こそ好機です。

ご家族の皆様で新春奉祝をお迎えになりますように心より祈念申し上げます。