入浴は痔疾の養生に最適です
日本式のお風呂はじんわりよく温まるという長所があります。湯舟に入って体を温め、汗を流し出してから体を洗います。湯舟に数回浸かって自然に毛穴を広げてからアカを取るのが最良の入浴法です。こうしたことからも、欧米のようにシャワーで済ませるよりは、日本式のほうが優れています。浴室から出るときには、風呂の湯より一~二度低めの湯をかぶると湯冷めはしにくいものです。
痔の症状にとって入浴は、温熱・圧刺激を受けることにより、血管やリンパ管に作用し血液の循環を活発にするので、非常に大切な養生のひとつです。毎日就寝前、四十~四十二度の温めのお湯にゆっくり浸かると副交感神経が刺激され、精神の緊張がほぐれ筋肉が緩み、熟睡につながります。入浴中は、できるだけ肛門に湯があたるように股を開き加減にして、肛門を温めながら緊張をほぐすよう心掛けてください。
出産を控えて痔の発症に悩んだ女性
「幼い頃から体が弱かった私は、長じてからも冷え性で、便秘がちでした。結婚してはじめての妊娠したころ、排便のたびに痛み、出血を見るようになります。次第に悪化し、絶え間ない激痛、いつも便器は真っ赤でした。お腹の子のことを考えると、絶望的な気分でした。
そんな時、痔によい病院があると知人に勧められ入院、さっそく手術でした。術後の苦痛は耐え難かったのですが、それよりも出産を控え、不安は極限でした。どうにか出産は無事に終え、一ヶ月ほどの通院で痔も完治したものだと思っていました。ところが、十年ほど過ぎて再発です。痛みも出血も、以前にましてひどくなりました。また手術だろうかと、一瞬よぎりましたが、手術では治らないとも考えました」。
父の介護中に痔を患ってしまった主婦の話
「若い頃から便秘気味でした。トイレではいつも力んだので、いつの間にかイボが出るようになりました。でも、すぐ収まったので、さほど気にも留めませんでした。やがて結婚して出産、イボが花のように脱出です。押し込んでも出てきます。歩くたびに下着に擦れ、排便時の痛みもつらいものでした。それでも、深刻には考えず、市販のお薬でしのいでいました。
寝たきりの義父の介護を始めたのも、その頃です。義父の容体が悪くなるにつれ、私の痔疾も悪化しました。ベッドから抱え起こすなんてつらく、日常の介護はできなくなりました。
自分の痔を早く治さなくてはと思いました。病院に駆け込み、勧められるまま手術を受けてしまったのです。術後は傷が疼き、排便時の痛みもつらかった。数日後どうにか治まりホッとしていましたが、二―三か月経つと、また脱出です。激しい痛みがぶり返しました。義父の病勢もどんどん悪くなります。痔のつらさと介護の心労で身の縮む思いでした」。
2回の手術を経て、三度目の痔の再発に苦しむ
「三十代前半、肛門に異常を感じました。時々肛門がヒリヒリして、脱出します。排便後、最初のうちは放っていましたが、突然戻らなくなりました。激しい痛みで我慢できず、手術を受けました。
しかし、十年後に再発、思い切って二度目の手術をしました。前回と同じ苦痛に耐えたのですが、その甲斐もなく、再三の激痛です。その後は、通院や市販の薬で治療を続けましたが、どれもその当座だけの効き目で、痔は一向に良くなりません。途方に暮れた私に医師が三度めの手術を勧めます。
さすがの私も、躊躇しました。過去二度の手術でも完治せず、病院の薬を使ってもこの有様、現代の医療では治らないものだと、まさに痛感したものです。どうしたものかと、生きる希望さえ失いかけていました」。
時間と場所を選ばない脱肛に泣いた人
「十代半ばでした。排便すると鮮血が滴りました。さほど気にせず放っていたのですが、そのうち排便のたびに出血です。市販薬を使いました。四十代に入りさらに悪化。鮮血が飛び散り、血の塊と出てくるのは兎の糞のような硬便一つでした。
その後は脱出して血が噴出します。便は出しきれず、いつも残余感があり、お腹が重苦しく、ようやく出血が止まっても、頭の芯まで響く激痛でした。やがて、ところ構わずの出血です。何かの拍子に、体に力を入れると、どっとあふれる血流がズボンにもしみ出します。仕事も手に付きませんでした。軽く咳をするだけでも脱出してしまい、膿や分泌物とともに粘膜のような物も出て、親指大に腫れ上がり激しい痛みで、気も狂いそうでした」。