4月、新緑の季節を迎え、近所の公園には花梨が香りのいいピンクの花をつけ、目を楽しませてくれます。可憐な中にも花梨は丈夫で病気にも強く、逞しい生命力を秘めているのです。これからの季節は自然の喜びに満ち溢れ、万物回生の時季とも言われています。
痔は人間の宿命です
痔を患っている方は、三人に一人といわれています。しかし、痔を自覚されていない方や、恥ずかしくて言えないといった方を含めると、さらに多い患者数になるとも考えられます。
なぜ痔になるのでしょうか。動物が痔になることはなく、人間に特有の病気です。その最大の原因は、二本足での歩行です。四本足で歩行する動物と違い、重い頭や上半身を腰やお尻の部分で支えて立ったり、歩いたりしなければならないのです。痔は血流が悪くなり鬱血することで体内に老廃物が蓄積し、それが長い間に「有害な老廃物」に転化して発症しますが、肛門付近や腰に負担のかかるこの二本足の歩行は、痔にとって最悪の条件のひとつなのです。
また、この二本足だけではなく、人間は動物とは違い、便意を催したとしてもトイレに入るまでの我慢が必要だったりすることもあります。動物であれば、自然のままにいつでも排泄できるわけです。これもまた、人間が肛門に大きな負担をかけ、痔になってしまう、大きな理由です。
このように、痔は人間特有の病気です。人間は人間として進化する過程で、痔という病を背負ってしまいました。便意はなるべく我慢しないことが大切なのです。
食物繊維が大切です
正しい排便習慣を心掛けることが重要ですが、そのためにはしっかりと食べることです。とくに食物繊維を充分お取り下さい。2015年版日本人の食事摂取基準によりますと、食物繊維の一日当たりの目標値は成人男性一人当たり20g以上、女性は18g以上といわれています。つまり最低でも20g程度は摂取すべきです。
ただ、食物繊維が含まれているものをひたすら食べるということではなく、いろいろな食材に含まれる食物繊維を上手に組み合わせて食べるようにしてください。また、食物繊維には、昆布やわかめ、ひじきなどの水溶性のものと、大根やゴボウ、れんこんのような根菜類の不溶性のものがあります。とくに便秘がちの方は、水溶性植物繊維と不溶性植物繊維のバランスを考え食事をとるようにしてください。
意外と知られてはいませんが、ゴボウやキノコのように食物繊維が長いものと、トウモロコシ、おから、きな粉のように短いものがあります。長いものは固まって肛門に引っかかってしまうこともありますので、調理する際には短めに切るようにしましょう。また、ファストフード類は食物繊維も少なく、脂肪分が多いものが目立ちます。バランスをお考えになりお摂りください。
痔にも適当な運動は必要です
痔はいきんだり、刺激を受けることで悪化してしまうので、運動なんてとんでもない、静かに過ごすべきだと考える方もおられるでしょう。しかし、激しいものでない限り、体を動かすことは必要です。運動を止めてしまうと、腸の蠕動運動が低下してしまいますので、便秘となり、痔の諸症状にかえって悪影響を及ぼします。
さらに、ストレスがたまりやすい方なら、ストレスが便秘や下痢の原因になることも考えられます。ストレスは自律神経のバランスを崩し、腸の働きにブレーキをかけてしまうのです。適度な運動することによって、ストレスが発散できて、腸の動きも改善されるのです。
痔に対する刺激や圧迫は最小限としながらも、腸の動きや全身の血行を良くする運動がふさわしいのですが、難しく考えないでください。デスクワークなど、同じ姿勢が多い方なら、一~二時間に一回くらいの割合で、体を伸ばしたりひねったりといった簡単な体操が腸の動きを促進します。また移動時のエレベーターなどを使うことを止めて階段を利用されるとか、休日なら一日三十分程度のウオーキングや軽い体操もお薦めです。
良質の睡眠を
いかに快適に眠ることができるのかが、痔疾の養生のなかでもたいへん重要です。
人間の睡眠時間は秋から冬にかけて徐々に長くなるといわれます。体内時計が時間の変化を感じ、睡眠時間やタイミングを変える役割を担うからです。ただ、闇雲に長く眠ろうとするより、いかに質の良い眠りができるかが問題です。良質な睡眠は免疫力を高めるともいわれ、さらに睡眠時には肛門の内括約筋が弛緩し、ゆっくり休息できます。
就寝前一時間の過ごし方が良質な睡眠の秘訣です。寝る直前にスマホや携帯、パソコンは止めましょう。就寝前にはリラックスして、軽い読書や優しい音楽を効くのも良いでしょう。また、寝室は真っ暗が一番ですが、それでは寝られないという方なら間接照明にしてください。敷布団は少し固めの寝返りが打ちやすいもの、枕もやや固めでフラットなもの。掛け布団は羽毛など軽く保温性の高いものにしてください。もちろん、寝室のカーテンや壁紙は、けばけばしい配色のものは避けてください。
寝付きが悪いとか不眠の方は、日頃の生活習慣を改められてはいかがでしょうか。
改めて生活習慣見直しを
痔は日本人の三人に一人が罹患しているともいわれ、近年は若い女性も増えているとされています。誰にも相談できず、一人悩んでいる方も少なくありません。だからといって、痔は放っていては治りません。我慢するほど悪化してしまいます。家傳薬での治療はもちろんですが、生活習慣の見直しも大切です。
トイレは必要以上に長くなっていないか、立ちづめ、座りっぱなし、しゃがみ続けるといった負担のかかりやすい姿勢を続けいるのではないか、ストレスを貯めていないだろうか、面倒だとお風呂に入る日を減らしていないか、お酒や香辛料などを取りすぎていないのか、お体を冷やしたり、重すぎる物を持ち続けるようなことを繰り返してないか―などご自身の生活習慣を振り返られて、お考えになってみてください。
当然ながら、止むに止まれぬこともあるかと思います。それでも同じ姿勢のお仕事なら、休憩時に体を動かすとか、お風呂に頻繁に入るようにするといった工夫も出来るかと思います。一つずつでも構いません。改善できることがあればやってみてください。こうした、ご自身を見直す姿勢が、全快後に、お身体に良い生活習慣になることは間違いありません。